イタリア最大の野党を率いる書記長エンリコ・オリヴェーリ(トニ・セルヴィッロ)は、政治家としてキャリア最大の危機に直面していた。天下分け目の国政選挙が迫っているというのに党の支持率は低迷し、支持者からはエンリコの責任を問う声が日増しに高まっている。党の全国大会の壇上に上がったこの日も、客席の中年女性から「お前が党をダメにした。さっさと出て行け!」と猛烈な罵声を浴びせられてしまう。
   その翌日、エンリコは重要な会議の場に姿を見せなかった。腹心の部下アンドレア(ヴァレリオ・マスタンドレア)が慌ててローマ市内の自宅を訪ねると、ピアノの上に「戦いの前に、ひとりになる時間がほしい」というエンリコ直筆の置き手紙が残されていた。彼がどこへ消えたのかは、妻のアンナ(ミケーラ・チェスコン)にも心当たりがない。困り果てたアンドレアは、選挙目前に党のリーダーが失踪したとは同僚にもメディアにも言い出せず、「体調不良で入院中」とその場しのぎの嘘をついてしまう。
   アンナから、エンリコにはジョヴァンニ(トニ・セルヴィッロ/一人二役)という双子の兄弟がいると聞いたアンドレアは、ワラにもすがる思いでジョヴァンニを捜し始める。哲学の教授であるジョヴァンニは、長らくエンリコとは疎遠の仲で、心の病の治療を終えて施設を退院したばかりだという。何とかアンドレアが見つけ出したジョヴァンニは、まさにエンリコと瓜ふたつの風貌の持ち主で、質素なアパートで書物に囲まれてひっそりと暮らしていた。そして一緒に近所のレストランを訪れると、アンドレアが席を外したすきに、ジョヴァンニをエンリコと思い込んだジャーナリストが取材を持ちかけてくる。エンリコに成りすましてインタビューに応じたジョヴァンニは、何事にも慎重派のエンリコとは対照的に切れ味の鋭いコメントを連発。その弁舌の巧みさに驚いたアンドレアは、ジョヴァンニをエンリコに仕立てる“替え玉作戦”を実行することを決意する。
   その作戦は大当たりだった。アンドレアの不安をよそに、書記長の行事をひょうひょうとこなすジョヴァンニは、シニカルな質問を投げかけてくる記者にも堂々と対応。ユーモアを交えつつも歯に衣着せず、欺瞞に満ちあふれた政治の現状を一刀両断するジョヴァンニのセンセーショナルな言動は、たちまちメディアの注目を集め、党の支持率を急回復させていく。
   その頃、ローマから失踪したエンリコは、パリで暮らしている元恋人ダニエル(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)のもとに事情を隠したまま身を寄せていた。すでにダニエルには映画監督のムングと幼い娘エレーヌがいたが、久しぶりに再会したエンリコの思いつめた様子を察し、彼をしばらく自宅に住まわせてやることにしたのだ。やがて映画のスクリプターをしているダニエルの仕事先に同行したエンリコは、病気で倒れた小道具係の代役として撮影現場で働き始める。書記長としてのプレッシャーから解放され、これまでの人生と今の自分を見つめ直したエンリコは、少しずつ心の平穏を取り戻していった。
   一方、ローマではエンリコに成りきったジョヴァンニが大統領や首相との会談もこなし、ますます党のリーダーとしてのカリスマ的な風格を漂わせていた。心配性のアンドレアも、しがらみに一切囚われずに社会や政治の正しいありようを説くジョヴァンニの人柄にすっかり心酔していた。そんなある日、数万人の市民が集結した屋外の大集会でステージに立ったジョヴァンニは、あらゆる聴衆の心を揺さぶる情熱的なスピーチを披露し、来る選挙での党の大勝利を決定づけるのだった。
   ところがイタリアという国そのものを変えようとしている極秘の替え玉作戦は、突然思いがけない事態に陥ってしまう。ローマから姿を眩ましたエンリコに続き、何とジョヴァンニまでも忽然と消えてしまったのだ……。